Red Hat Enterprise Linux 9(RHEL 9)は、2022年5月18日にリリースされたエンタープライズ向けLinuxディストリビューションです。Full Support(完全サポート)は2027年5月31日まで、完全なサポート終了(Maintenance Support EOL)は2032年5月31日です。有償のELSを利用すれば2035年5月まで延長できます。本記事では、RHEL 9のサポート終了日と、RHEL 8からの移行方法について解説します。
Red Hat Enterprise Linux 9 のサポート期限一覧
| サポート種別 | 開始日 | サポート終了日 | 現在のステータス |
|---|---|---|---|
| Full Support | 2022-05-18 | 2027-05-31 | サポート中 |
| Maintenance Support | 2027-06-01 | 2032-05-31 | 今後提供 |
| Extended Life Cycle Support(ELS) ※有償オプション |
2032-06-01 | 2035-05-31 | 今後(有償) |
RHEL 9 のサポートポリシー
RHELは固定ライフサイクルポリシーに従い、Full Support(5年間)とMaintenance Support(5年間)の計10年が標準サポートです。RHEL 9のFull Supportは2027年5月まで継続されており、現在はセキュリティ更新・バグ修正・新機能・新ハードウェア対応がすべて提供されます。EUS(Extended Update Support)により偶数マイナー版(9.0, 9.2, 9.4, 9.6)を最長24ヶ月継続利用することも可能です。
基本情報
- 最新バージョン: 9.7(2025年11月11日リリース)
- カーネルバージョン: Linux 5.14系
- Python: 3.9(デフォルト)、3.11/3.12も利用可能
- OpenSSL: 3.0.1(TLS 1.3対応、ポスト量子暗号の基盤)
- EUS対象版: 9.0, 9.2, 9.4, 9.6(偶数マイナー版のみ)
- 対応アーキテクチャ: x86_64(v2以上), aarch64, s390x, ppc64le
- サブスクリプション: Standard または Premium(年間契約)
RHEL 9 の主な特徴
RHEL 9はRHEL 8から大幅にコンポーネントが更新されており、カーネル・暗号ライブラリ・開発ツールが刷新されています。特にOpenSSL 3.0への移行はアプリケーションスタック全体に影響するため、RHEL 8からの移行時には十分な検証が必要です。
RHEL 8 との主な違い
| 項目 | RHEL 8 | RHEL 9 |
|---|---|---|
| カーネル | 4.18 | 5.14 |
| OpenSSL | 1.1.1 | 3.0.1 |
| Python(デフォルト) | 3.6 | 3.9 |
| OpenSSH | 8.0p1 | 8.7p1 |
| ネットワーク設定 | ifcfgファイル形式 | キーファイル形式(デフォルト) |
| x86 CPU要件 | x86-64(v2) | x86-64-v2以上 |
2027年5月以降のリスク
RHEL 9のFull Supportは2027年5月31日に終了します。その後のMaintenance Support期間(〜2032年5月)はセキュリティ更新とバグ修正のみとなり、新機能・新ハードウェア対応は提供されません。現時点から計画的に移行準備を進めることを推奨します。
1. Full Support終了後の機能停止
2027年6月以降のMaintenance Supportフェーズでは、新機能・新しいハードウェアドライバ・パフォーマンス改善は提供されなくなります。最新のクラウドサービスやソフトウェアのRHEL 9対応が打ち切られる時期も重なるため、システムの陳腐化が進みます。
2. Maintenance Support終了後のセキュリティリスク(2032年5月)
2032年5月以降はセキュリティパッチも提供されなくなります(ELS契約なしの場合)。EOLの5年以上前から後継OSの評価と移行計画を立てておくことで、期限直前の混乱を防げます。
3. コンプライアンス上のリスク
PCI DSS・ISMS・SOC 2などの認証では、EOSとなったOSの継続利用に対して追加の補完策が求められます。2032年以降も認証を維持するためには、Maintenance Support終了前に次期バージョンへの移行を完了させることが推奨されます。
推奨される移行先
RHEL 9はFull Supportが2027年まで継続されており、現時点では安定運用が優先です。ただし2027年のFull Support終了に向けた移行計画を今から立てておくことで、期限直前の混乱を回避できます。
RHEL 10(推奨・商用サポートが必要な場合)
- Full Support終了: 2030年5月31日 / 完全EOL: 2035年5月31日
- 最新版: 10.1(2025年11月リリース)
- メリット: Leappによるインプレースアップグレードが対応予定。Linux 6.12カーネル・OpenSSL 3.5・Python 3.12・ポスト量子暗号対応
- 注意点: CPU要件がx86-64-v3以上に引き上げられており、古いサーバーでは動作しない場合がある
Rocky Linux 9(無償の代替・同世代継続)
- 完全EOL: 2032年5月31日(RHEL 9と同一)
- メリット: RHEL 9と100%互換。無償・商用利用可
- 適したケース: Red Hatサブスクリプションのコストを削減したい場合の同世代継続
移行時の注意点(RHEL 8 → 9)
Leappツールによる8→9インプレースアップグレード
RHEL 8.8またはRHEL 8.10からRHEL 9へのインプレースアップグレードがLeappで公式サポートされています。leapp preupgradeでプレアップグレードレポートを生成し、問題点を事前に把握してから本番アップグレードを実施してください。アップグレード後はRHEL 9の最新マイナー版が適用されます。
OpenSSL 1.1.1 → 3.0 の変更
OpenSSL 3.0では1.1.1との間にAPIの非互換性があります。OpenSSLに依存するアプリケーション(Python・Ruby・Node.js・独自ビルドのソフトウェア)のOpenSSL 3.0対応を事前に確認してください。特にTLS/SSL通信を実装しているアプリケーションの動作検証を優先してください。
ネットワーク設定の移行
RHEL 9ではNetworkManagerのデフォルト設定がキーファイル形式(/etc/NetworkManager/system-connections/)に変更されています。RHEL 8でifcfgファイルを使用していた場合、移行時に設定内容を新形式へ書き直す必要があります。Leappは自動変換を試みますが、複雑な設定は手動での確認が必要です。
Python 3.6 → 3.9 の変更
RHEL 9のデフォルトPythonは3.9です。Python 3.6から3.9への移行は比較的小さいですが、一部の非推奨APIが3.9で削除されています。既存のPythonスクリプト・Ansibleプレイブックの動作確認を推奨します。
物理サーバーの更新か、VPSへの移行か
RHEL 9を物理サーバーで運用している場合、2027年のFull Support終了はハードウェア更新サイクルと重なる可能性があります。OSの移行とあわせてVPS(仮想プライベートサーバー)への移行を検討することで、今後のサーバー保守コストを大幅に削減できます。
VPS移行により、ハードウェア保守からの解放と柔軟なスケールアップが可能になります。初期費用なしで最新OS環境を構築でき、バックアップや監視もクラウド側のサービスを活用できます。
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公式情報
- RHEL ライフサイクルポリシー – Red Hat Customer Portal
- RHEL 8 から RHEL 9 へのアップグレードガイド – Red Hat Docs
- RHEL Extended Update Support(EUS)概要 – Red Hat