Debian 10(コードネーム: Buster)は2019年7月6日にリリースされたDebian Project製のLinuxディストリビューションです。LTS(長期サポート)は2024年6月30日に終了しており、現在は公式のセキュリティパッチが提供されていません。FreexianによるELTS(Extended Long Term Support)を利用すれば有料で2029年6月30日まで延長できますが、Debian 12(Bookworm)への移行が推奨されます。本記事では、Debian 10のサポート状況と移行手順を解説します。
Debian 10 のサポート期限一覧
| バージョン | 標準サポート終了 | LTS終了 | ELTS終了 |
|---|---|---|---|
| Debian 10 Buster(対象) | 2022-09-10 | 2024-06-30(終了済み) | 2029-06-30(有料) |
| Debian 11 Bullseye | 2024-08-14 | 2026-08-31(残り約3ヶ月) | 2031-06-30(有料) |
| Debian 12 Bookworm(推奨) | 2026-06-10 | 2028-06-30 | 2033-06-30(有料) |
| Debian 13 Trixie(最新) | 未定 | 未定 | 未定 |
Debian のサポートポリシー
Debian は各メジャーバージョンに対して約3年間の標準サポートを提供します。その後、Debian LTS チームが約2年間のセキュリティサポート(LTS)を継続します。さらに Freexian(有料サービス)が ELTS を提供しており、主要パッケージに限定して最大5年間の延長が可能です。
基本情報
- リリース日: 2019年7月6日
- 最終バージョン: 10.13
- コードネーム: Buster
- LTS終了日: 2024年6月30日(終了済み)
- 後継製品: Debian 12 Bookworm(推奨)・Debian 13 Trixie(最新)
- カーネル: Linux 4.19 LTS
- 主な特徴: GNOME 3.30・KDE Plasma 5.14・Python 3.7・PHP 7.3・MariaDB 10.3
ELTS(延長長期サポート)について
Freexian が提供する ELTS(Extended Long Term Support)を契約すると、Debian 10 の主要パッケージについて2029年6月30日までセキュリティパッチを受け取ることができます。
- 提供元: Freexian(Debian LTS チームのスポンサー企業)— 公式ではなく商用サービス
- 対象パッケージ: Linux カーネル・OpenSSL・glibc・Apache・PHP など主要パッケージ(全パッケージではない)
- 終了日: 2029年6月30日
- 注意: ELTS は移行期間の延命措置。サポート対象外パッケージの脆弱性は修正されない
サポート終了後のリスク
ELTS未加入の場合はすでにリスク状態です。ELTS加入中でも対象外パッケージの脆弱性は未修正のまま残ります。
1. セキュリティパッチの停止
LTS終了後に発見されたCVEに対するパッチが提供されません。Debian 10が搭載するPHP 7.3・Python 3.7・OpenSSL 1.1はすでにアップストリームのサポートも終了しており、セキュリティリスクが重複します。WebサーバーやDBサーバーとして公開している環境は特に危険です。
2. パッケージ・ライブラリの老朽化
Debian 10 は PHP 7.3・Python 3.7・MariaDB 10.3 がデフォルトです。いずれもアップストリームのサポートが終了しており、最新のフレームワークやライブラリとの互換性問題が生じます。アプリケーションのモダナイズの妨げになります。
3. コンプライアンスリスク
PCI DSS・ISO 27001・SOC 2 等の審査では、EOL OS の継続利用は指摘対象です。クラウドホスティング事業者や SaaS プロバイダーとして運用している場合、顧客への説明責任が生じます。
推奨される移行先
Debian 10 からは apt を使ったインプレースアップグレードが可能です。Debian 10 → 11 → 12 の順にアップグレードを進めてください。
Debian 12 Bookworm — 推奨(LTS 2028年まで)
- リリース日: 2023年6月10日
- LTS終了: 2028年6月30日
- 主な更新: Linux 6.1 LTS・PHP 8.2・Python 3.11・MariaDB 10.11・PostgreSQL 15
- メリット: 安定性が高く主要拡張機能も対応済み。LTSまで約2年の余裕
- 移行方法: Debian 10 → 11 → 12 の2段階アップグレード(直接10→12はサポート外)
Debian 13 Trixie — 最新版(2025年8月リリース)
- リリース日: 2025年8月9日
- LTS終了: 未定(2030年代前半見込み)
- メリット: 最新パッケージ・最長サポート期間が見込める
- 注意点: リリースから日が浅く、一部拡張パッケージの対応が遅れる場合あり
移行時の注意点
段階的アップグレードの必要性
Debian は2世代以上のスキップアップグレードはサポートされていません。Debian 10 → 12 へは必ず 10 → 11 → 12 の順で進めてください。各段階で apt update && apt full-upgrade を実行し、問題がないことを確認してから次へ進みます。
PHP・Python のバージョン変化
Debian 12 では PHP 8.2・Python 3.11 がデフォルトになります。PHP 7.x で書かれたアプリケーションは非推奨関数・廃止された構文への対応が必要な場合があります。移行前に php -l や静的解析ツールで互換性を確認してください。
サービスの設定ファイル確認
Apache・Nginx・MySQL/MariaDB の設定ファイルはアップグレード時に上書きされる場合があります。/etc/ 以下の設定ファイルを事前にバックアップし、アップグレード後に差分を確認してください。
物理サーバーの更新か、マネージドサービスへの移行か
Debian 10 を稼働させているサーバーは6年以上経過しているケースが多く、ハードウェア更新のタイミングとしても適切です。OSのアップグレードと合わせてVPSやクラウドへの移行を検討することで、インフラ全体の近代化とコスト最適化を同時に実現できます。